Chopin:Nocturne Op.48 No.1


「永流堂奇譚」第三話カーラーグルの香木トレーラーのBGMに使用したのは「ピアノの詩人」ことフレデリック・ショパンの「ノクターン13番」です。
ショパンのノクターンというとCMなどで使用されることが多い第2番や、戦場のピアニストで使用された第20番が有名で、第13番はクラシックになじみがない人は聴いたことがないかもしれません。
しかし、ショパンの円熟期に作られた第13番は「ショパンの傑作の一つ」といわれており、ショパンコンクールなどでも演奏機会の多い曲の一つです。

ショパンのノクターンは序盤-中盤-終盤の三部構成になっているものが多いのですが、第13番も典型的な三部構成になっています。
重々しくどこか不吉な印象すらある低音部と幻想的で華やかな高音部が呼びかけあうような序盤、低音部と高音部が互いに調和して歌いささやき合うような中盤、激しい感情の波のような終盤と展開する様子は非常に情熱的でドラマティック。
メロディは序盤と終盤で同じ主題が使われるA-B-A形式ですが、重く引きずるような序盤に対して終盤は2倍ほどの速さになっており、強く激しく狂おしくなるのが特徴です。

個人的には、心の中に不安や悲しみを抱いている男性が華やかで美しい女性に恋をし、一時の平安を得るものの、やがて「自分の元を離れていってしまうのではないか」という不安におびえるようになり、憎悪にも似た狂おしいまでの愛に縛られ、互いに求め合いながらも深く傷つけあう…なんとなくそんなストーリーが思い浮かびます。
このストーリーならラストは男が女を刺して、残された男は力なく笑いながら後追いする展開ですね。また一部の人に怒られそうなこと書いてるよこの人は。

ショパンは最初に好きになったクラシックの作曲家で、きっかけは学校の行事で聴いた「英雄ポロネーズ」です。
「なにかが来るぞ!」という予感に満ちた前奏のあとに華やかで輝かしい主題がパーン!と飛び出すような展開は、重々しい門が開いて美しい装飾を施された白銀の鎧をまとった兵のパレードが飛び出してきたようなイメージが浮かびました。
馬が走り抜けたり戦いが始まったり…と、目の前で映像が展開するような(というか、脳内で映像を見ていたのですが)感じに、ごっそりとやられてしまいました。ショパンやばい。
その後、絶賛中二病(いまだ完治せず)を発症した私は、「夜想曲」という名前だけでノクターン全曲をおさめたCDを購入し 、ノクターン第一番の最初5秒くらいであえなくノックアウトいたしました。不思議なもので、好きになる曲って最初の5秒くらいでグイッときちゃうんですよね。そういう作品を私は書きたい。(無理ぽ)

ショパンは弾く人によって景色がかなり変わる作曲家ですが、ノクターン13番は特に演奏者の個性が出る楽曲かもしれません。
個人的に一番好みなのはこの方…

Chopin: Nocturne No. 13 in C Minor, Op. 48 No. 1

少したどたどしい雰囲気すらある主旋律とドラマティックな和音の組み合わせ、美しくて情熱的で力強い演奏だと感じました。
癖の強い演奏なので好みは分かれそうですね。