Fauré : Requiem4. Pie Jesu

【歌詞と対訳】

Pie Jesu Domine
dona eis requiem
sempiternam requiem

慈愛深いイエスよ、主よ
与えてください、彼らに、安息を
いつまでも続く安息を


「アヴニール」の紹介動画用BGMとして使用したフォーレ「レクイエム第4番 ピエ・イエス」は、清らかでいてどこか沈痛な雰囲気が美しい一曲です。
「レクイエム」は日本語では「鎮魂歌」と訳され、死者の安息を祈るための曲全般をさしますが、狭義では死者のためのミサで用いる聖歌を指します。モーツァルトやヴェルディもレクイエムを作曲しています。
「レクイエム第4番」とあるように、死者のミサで使用されるレクイエムは1曲ではなく、数曲から構成されています。ミサの流れに沿って使用される聖歌なので演奏順や歌詞などもある程度決まっていますが、作曲家によって「ミサのどの典礼文に曲を作るか」が違っていたり、解釈の仕方によって曲のテイストがかなり違ったりします。聴き比べるとなかなか面白い。

モーツァルトとヴェルディは作曲した典礼文の箇所が大体同じなのですが、フォーレはレクイエムの必須曲である「怒りの日」を作らなかったり、定番である「涙の日」を作らず「ピエ・イエス」の一部にしちゃったりと、構成が結構独特です。斬新過ぎるということで叱責や批判を受けたともいわれています。
また、フォーレのレクイエムはモーツァルトやヴェルディのレクイエムにある「死の恐ろしさ」というものがあまり表現されていないのも特徴です。死を安息や苦からの解放としてとらえており、恐怖の対象ではなく至福の喜びとしてとらえられています。

「アヴニール」のクライマックスでは、チャダがフォーレのレクイエムを口ずさむシーンがあります。このとき口ずさむのは第4曲ではなく、第6曲の「リベラ・メ(リベラ・ミ)」ですが…。
動画を作りはじめた時点では「リベラ・メ」を使うつもりでした。ただこの曲、歌詞の内容が「私を解き放ってください」であり、生者が許しを請うというニュアンスがある曲なのです。あのシーンでチャダが口ずさむのは次の流れへ繋がりでもあるのでいいのですが、動画に使うなら個人ではなく「あの世界」全体に対する祈りの曲の方がふさわしいのではないかと感じたのです。あと、「リベラ・メ」はゆっくりと重厚なテンポで始まる曲なので合わなかったのですよね。尺が。

そういった理由から、動画ではフォーレのレクイエムのなかでも有名で、個人的にも大好きな「ピエ・イエス」を使用しました。「ピエ・イエス」というレクイエムは、デュリュフレや「オペラ座の怪人」「キャッツ」などのミュージカルで有名なアンドリュー・ロイド・ウェッバーも作曲していますが、個人的にはフォーレの「ピエ・イエス」がもっとも美しいと感じています。