Debussy: Rêverie


「アヴニール」のトレーラー前半部分のBGMとして使用したドビュッシーの「夢(夢想)」は、代表作「月の光」と同時期に作られた、幻想的で優しく甘美な旋律が特徴的は作品です。ほんのり東洋風なエッセンスも感じられます。
4/4拍子の曲ですが、波のように流れる分散和音の上に乗ったグレゴリオ聖歌風の旋律の隙間から3連符がひょっこり顔を出したり、音が強くなったり弱くなったりと、比較的シンプルな構成なのにどことなくトリッキー。
このトリッキーさがうとうとしているときの意識のような、あるいはホロ酔いになっているかのような雰囲気を出しているといえるかもしれません。

ドビュッシー自身は生活が苦しい初期に作曲した「やっつけ仕事の粗悪品」と評価しています。本人の意に反して代表曲・有名曲として挙げられてしまうのはなんだか皮肉ですね。個人的には、ドビュッシーの「ドビュッシーらしさ」みたいなものが出ていて好きなのですけれど…。

「夢」という言葉は「眠っているときに見るビジョン」という意味以外に、「将来実現させたいと心の中に思い描いている願い」「現実とかけはなれた考え。実現の可能性のない空想」「現実を離れた甘美な状態」「はかない物事。不確かな事」といった意味を持ちます。
「アヴニール」のトレーラー前半部分に使用したのは、作中における二人の関係や心の内がまさに「夢」のようなものであるから。どこがどのように夢であるかは、読んでいただくとわかる…かもしれません。

ちなみに、サイト内で「夢を見た」という詩を公開しております。こちらは、まさにドビュッシーの「夢」を聴いてしたためたものです。