永流堂の店主「L」は、見た目は30代くらい、色白で細身、類稀なる美貌の持ち主。
長い黒髪を持っていることから一見すると女性にも見えるが男性。常に和服着用で羅宇煙管を携帯している。
物腰は柔らかく言葉づかいは丁寧。日がな一日揺り椅子に座ってキセルを吹かして過ごしており、彼が飲食をするところを見たものはいない。
「お客様が第一です」という言葉通り、客の頼みは聞き届けるが、頼まれなけれ基本的に何もしない。客以外に対しては冷淡。
永流堂にある”いわくつき”の商品を自在に使用できる、品を持ち帰った客の身に何が起こっているかを見ていないはずなのに熟知しているらしい、明らかに奇妙な空間である「永流堂」について何の違和感も持っていない、日光を浴びることができない体質、神出鬼没などなど、明らかに人間離れしている。そもそも、名前からしておかしい。
麻利絵いわく「ひねくれ者のサディスト」。
私は小説を書くとき、実在の人物をモデルにすることはほとんどないのですが、「L」はモデルが存在する珍しいキャラクター。話口調や物腰の優雅さなどもモデルになった方の雰囲気そのままです。
現在は完全に繋がりが無くなり、どこでどう過ごしているかも不明ですが、お元気でいらっしゃるのではないかと思います。
「L」は書いていて非常に楽しいキャラクターですが、和服を着ているので立ち振る舞いや細かな所作をイメージするのがなかなか難しいことがあります。キセルの扱い方、しゃがみ方など細かい部分ではありますが、そういう細部にこそ「らしさ」が現れるものと考え、自分自身着物で過ごしたり、キセルを購入したりして研究しています。
また、彼が話す骨董品などなどに関する「うんちく」は永流堂シリーズの中でやりたいことの一つである「読む人が骨董品や工芸品などに関心を持つきっかけになる作品にする」は欠かせない要素です。もしかすると「この部分いらない」と感じられる方もいるかもしれませんが、この部分がなければ舞台を骨董屋にする意味がないともいえます。そんな、「永流堂奇譚が永流堂奇譚であるための要素」を担ってくれる重要人物です。
「L」はとかく謎だらけの人物ですが、永流堂の店主をしている理由や、奇妙な名前や、その「特異体質」や……など、数々の謎はシリーズを重ねるごとに少しずつその辺を明かしていきます。