長い夜のすごし方

 会社から戻るとコンビニで買ってきた夕食を平らげ、温めのシャワーを浴びる。
髪を乾かしたら、ぼんやりと天井のしみを眺めながら、冷凍庫に入れていたボンベイサファイアをストレートで飲む。
一本空ける頃……つまり、ベロベロに酔っ払う頃には大体深夜一時。アルコールの力で何も考えられなくなって、眠気でずぶずぶになったらベッドに潜り込む。
翌朝、頭痛と胸焼けを抱えながら歯を磨いて化粧をして、半分のトーストをコーヒーで流し込む。
 アタシの中でとぐろを巻いている絶望と寂しさに飲み込まれてしまわないように、アタシなりに精一杯考えた暮らし方は、とにかく忙しく飛び回ったり、脳みそをアルコール漬けにして考えることをやめることだった。
けれど、ふとした拍子にアタシは立ち止まってしまったり、頭の中が冴えてしまう。そのたび、足元にぽっかりと穴が開いたような恐怖を感じる。
 今日もそんな日で、アタシはすでに二本目のボンベイを半分ほど空けているというのに、一向に眠気はやってこなかった。
(これ以上はやばいなぁ。)
 そう考えながら、アタシはグラスの中身を飲み干す。
冷たいようでいて喉を焼く液体が、癖のあるハーブの香りと共に喉を滑り落ちた。
体の感覚は水の中のようにふわんふわんしていて、手や足は重いのに眠気は一向に襲ってこない。時計を見ると、すでに三時を過ぎていた。明日は朝から会議があるのに。
 これ以上飲むと急性アルコール中毒で死んじゃうかもしれない……という考えがふと過ぎった。
別にいいじゃない、死んだって。
アタシの中で誰かがいった気がした。

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