たまご

僕はズボンとサンダルを脱いで川の中に入った。水はひんやりと冷たく、とても気持ちがいい。
足元に注意しながら進む。それが沈んでいたのは思っていたより深い場所で、僕は腰まで水に浸かっていた。シャツも脱ぐべきだったなと後悔する。
 落としてしまわないように気をつけながらそれを拾い上げた。ずっしりとした重みはあるものの、石にしては軽すぎる。
僕は川から上がると、川原の草の上にそっと置いた。太陽の光を受けて、表面がてらてらと輝いている。
「やっぱり石じゃないみたいだな。」
「だろ? これは絶対恐竜の卵だよ。」
 濡れたパンツを絞っている僕を尻目に二人は喋っていた。お礼の一言くらい言って欲しいなぁ……。
とりあえず、気持ち悪いけれど濡れたパンツの上からズボンをはき、二人の間に加わる――僕が川から拾い上げたそれは、何度見ても石のようであり、卵のようでもある。そう、石の卵といった感じだ。
「とりあえず、基地まで持っていこうよ。」
 二人が頷いたので、僕は再び石の卵を抱える。石の卵はほんのりと温かい気がした。
さっきは全然そんな風に思わなかったのに……きっと、太陽の熱で温まったんだろうと思った。

「よし、準備できたぞ。」
 僕たちの中では一番器用なマキオが有り合わせの板と釘で小さな箱を作り、ヤスベエは自宅からたくさんの藁を抱えてやってきた。
マキオの箱にヤスベエがたっぷりの藁を敷く。石の卵専用のベッドが完成というわけだ。 僕はまるで、大切な赤ん坊を寝かせるようにそっと石の卵を置く。
「すごいな、俺たちの宝物だぞ!」
「これ、本当に卵なのかな。だとしたら、何か産まれるんじゃないか?」
 僕たちは興奮気味に話し合った。これがもし卵だったら何が産まれて来るのか。温めたほうがいいのか。何日くらいかかるのか……。とにかく、これから毎日様子を見にこようという結論だけが残り、その日は藁を被せただけで帰ることにした。